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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《陰獣(いんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 66,968 字 · 131 頁
鬘さえ冠れば、顔などは、暗いガラスの外ではあり、チラッと見せる丈けでよいのですから(そして、その方が一層効果的なのです)恐怖に戦いている静子に見破られる心配はありません。
あの夜(三月十九日)六郎氏は小梅の碁友達の所から帰り、まだ門が開いていたので、召使達に知れぬ様、ソッと庭を廻って洋館の階下の書斎に入り(これは静子から聞いたのですが、彼はそこの鍵を例の本棚の鍵と一緒に鎖に下げて持っていたのです)其時はもう階上の寝室に入っていた静子に悟られぬ様、闇の中で例の鬘を冠り、外に出て、立木を伝って洋館の軒蛇腹に上り、寝室の窓の外へ廻って行って、そこのブラインドの隙間から、ソッと中を覗いたのであります。のちに静子が窓の外に人の顔が見えたと私に語ったのは、この時のことであったのです。
さて、それでは、六郎氏がどうして、死ぬ様なことになったか、それを語る前に、私は一応、私が六郎氏を疑い出してから二度目に小山田家を訪ね、洋館の問題の窓から、外を覗いて見た時の観察を申述べねばなりません。これはあなた自身行って御覧なされば分ることですから、くだくだしい描写は省くことに致しますが、その窓は隅田川に面していて、外は殆ど軒下程の空地もなく、すぐ例の表側と同じコンクリート塀に囲まれ、塀は直ちに余程高い石崖に続いています。