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いんじゅうそのた

「陰獣」その他

平林 初之輔

線上閱讀平林 初之輔《「陰獣」その他(いんじゅうそのた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,188 字 · 9 頁

青空文庫

一 陰獣評

一 陰獣評

江戸川乱歩氏の「陰獣」は、同氏の久し振りに発表した作であったのと、同氏独特の念入りな、手のこんだ、寸分のゆるみもない作品であったとのために、探偵小説の作者仲間では、異口同音に近い好評を博したようである。私も増刊〔『新青年』〕の分を読んで、九月号は雑誌が着くとすぐに旅に出たので、旅先で買って読み、十月号の分も雑誌が着くと真っ先に読んだ。その点で「陰獣」は完全に成功している。ことに九月号の作者の付言は、次号に対する期待をいっそう深からしめる、広告的効果を多分にもっていた。乱歩氏ほどの作者に、あれだけの自信があるのだから、結末は定めし、読者をあっと言わせるに相違ないと誰しも期待したに相違ない。

読者の期待は裏切られはしなかった。読者のうちには小山田の細君が犯人であろうと推定した人は少なくなかったに相違ない。しかしそれは論理学でいうロー・オブ・エリミネーション〔消去法〕によって疑わしくない人間をだんだん除去してゆくと、あとに小山田の細君が残るというだけのことで、それ以上にたち入って犯人推定の根拠を示すことは恐らく大抵の人にはできなかったであろうと思う。