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ゆき
雪
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《雪(ゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 頁
白樺の老樹の細い枝が樹氷につつまれて空一面に交錯している間に、僅かばかりの空所があって、その間を静かに降って来る雪の結晶は、予期以上に繊細巧緻を極めた構造のものであった。夜になって風がなく気温が零下十五度位になった時に静かに降り出す雪は特に美しかった。真暗なヴェランダに出て懐中電燈を空に向けて見ると、底なしの暗い空の奥から、数知れぬ白い粉が後から後からと無限に続いて落ちて来る。それが大体きまった大きさの螺旋形を描きながら舞って来るのである。そして大部分のものはキラキラと電燈の光に輝いて、結晶面の完全な発達を知らせてくれる。標高は千百米位に過ぎないが、北海道の奥地遠く人煙を離れた十勝岳の中腹では、風のない夜は全くの沈黙と暗黒の世界である。その闇の中を頭上だけ一部分懐中電燈の光で区切って、その中を何時までも舞い落ちて来る雪を仰いでいると、いつの間にか自分の身体が静かに空へ浮き上って行くような錯覚が起きて来る。外に基準となる物が何も見えないのであるからそんな錯覚の起きるのは不思議ではないが、しかしその感覚自身は実に珍らしい今まで知らなかった経験であった。