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ゆきたたき

雪たたき

幸田 露伴

線上閱讀幸田 露伴《雪たたき(ゆきたたき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,132 字 · 56 頁

青空文庫

其処へかかると中に灯火が無く、外の雪明りは届かぬので、ただ女の手に引かるるのみの真暗闇に立つ身の、男は聊か不安を覚えぬでは無かった。

然し男は「ままよ」の安心で、大戸の中の潜り戸とおぼしいところを女に従って、ただ只管に足許を気にしながら入った。女は一寸復締りをした。少し許りの土間を過ぎて、今宵の不思議な運を持来らした下駄と別れて上へあがった。女は何時の間に笠を何処へ置いたろう、これに気付いた時は男は又ギョッとして、其のさかしいのに驚いた。板の間を過ぎた。女は一寸男の手を上げた。男は悟った。畳厚さだけ高くなるのだナと。それで躓くことなども無しに段々進んだ。物騒な代の富家大家は、家の内に上り下りを多くしたものであるが、それは勝手知らぬ者の潜入闖入を不利ならしむる設けであった。

幾間かを通って遂に物音一ツさせず奥深く進んだ。未だ灯火を見ないが、やがてフーンと好い香がした。沈では無いが、外国の稀品と聞かるる甘いものであった。

女はここへ坐れと云うように暗示した。そして一寸会釈したように感じられたが、もの静かに去った。男は外国織物と思わるる稍堅い茵の上にむんずと坐った。