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せいねんのしさくのために

青年の思索のために

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《青年の思索のために(せいねんのしさくのために)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 102,550 字 · 203 頁

青空文庫

二

誰もこのことを疑うものはない。だから、旗印など、無くてすめば、無い方がいいにきまっている。その意味からいって、佐竹藩の諸将が、左文の旗じるしを嘲ったのにも、一応の道理がある。だが、われわれは、旗じるしを立てた左文が、ただ一騎で、敵将の首を討ち取っている間に、左文を嘲った諸将は、おめおめと敵にうしろを見せていた、という事実も決して忘れてはならない。

事を成すには、謙遜でなくてはならぬ。仕事が困難であればあるほど、謙遜であることが大切である。そして、謙遜とは、自己を過信しないことであり、つねに自分のこころに鞭打つことを忘れないことである。心を虚うして神と賢哲とに聴き、あるいは座右の銘をつくり、あるいは起請文をささげて、自己の力の足らざるを補おうと努めることである。左文がかかげた旗じるしも、またそれではなかったか。彼の旗じるしを、彼の傲慢誇示の標徴だと見た諸将は、真に左文のこころを知るものではなかった。この旗じるしこそは、実は、左文にとっては虔ましい心の誓いであり、人生の戦いにおける背水の陣であり、みずからの怯懦なる魂に対する策であったのである。

三

己の欲するところに従って矩を踰えなかった孔子、「神吾とともに在り」