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ふうりゅうばけものやしき

風流化物屋敷

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流化物屋敷(ふうりゅうばけものやしき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 頁

青空文庫

二 世に人間のいればいるもの

と叫び、たぶん備忘録を書くためだろう、あたふたと家の中へ駈け上っていった。

二 世に人間のいればいるもの

柘榴屋敷へはいったのは御座平之助という若侍である、浅野家の江戸家老で一万二千石を取る植田主水という人の三男坊だが、絶家していた御座姓を継いで広島詰めになった。年は二十七歳、肉付のいい五尺七寸あまりの堂々たる体躯と、のんびりした図抜けて明るい上品な顔が人眼をひく。ゆらい、三男はすばしっこくて負け嫌いの暴れん坊と商標の定ったものだ、しかるに平之助は全然その逆であった。いや逆などというなまやさしいものではない、「世俗の異端者、常識の謀反人」というべきである、もっともこれは彼の精神が捻くれていて、ことさら俗習に反抗したというわけではない、捻くれるどころか彼ほど純真無垢で生一本で明けっ放しで明朗な人間は、神か白痴の社会でなければみいだすことはできないと保証してもいい。なにしろ、生家が一万二千石というちょっとした大名くらいの収入があり、育ち方も違うのだがしかし、――否、それは物語の進むにつれて自然とわかってくることだ、ひとつ彼のすることを見るとしよう。

隣りの小太郎少年が報告に駈けつけた日には、係りの下役人と御座の下僕がやって来て、掃除をしたり荷物を運び込んだりしていった。