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かいじんじゅうまんかん
魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編
内田 魯庵
線上閱讀内田 魯庵《魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編(かいじんじゅうまんかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,671 字 · 55 頁
話を綜合すると、
今暁四時半、隣家の富田洋服店の三階の火熨斗場から発火して、一間と離れない丸善の二階へ直ぐ燃付いて、瞬く中に仮営業所の全部に火が廻って、到頭隣家の二三軒までも焼落ちて了った。此晩の丸善の宿直が揃いも揃って近視鏡を用ゆる三名、寄宿の小僮が十名。唯った之ぎりの人数だから、近所の取引先きや出入の職人の手伝いもあったが、火さきは早いし、手は廻らず、一番重要な書類を漸とこさ持出したゞけで、商品は殆んど全部が焼けて了ったという。
雑然喧然騒然紛然たる中に立って誰からとなく此咄を聞きつゝ何とも言い知れない感慨に堪えなかった。眇たる丸善の店は焼けようと焼けまいと社会に何の影響も与えまいが、此中に充積する商品は皆日本の文明に寄与する糧であった。戦争に勝っても日本の文明は猶だ欧米と比べものにならない今日、ラデュームやエレクトロンやプラグマチズムや将たイプセンやニーチェやトルストイの思想が学者間の談柄にのみ限られてる今日、欧米首都の外は地理的名称さえ猶だ碌々知られていない今日、自然主義を誨淫文学と見做し社会主義を売国論と敵視する今日、ロイテル電報よりも三面雑報の重大視される今日、滔々たる各方面の名士さえ学校時代の教科書たる論語とセルフヘルプの外には哲学も倫理もなきように思う今日、此の如く人文程度の低い日本で