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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

遺憾ながらこのたびも、遂に、弦之丞を討ち洩らしたが、次の機会には、必ずこの遺漏の不名誉をすすぎまする、という申しわけだ。

そして、自身刺客として弦之丞をつけ廻るうちに、関屋孫兵衛、旅川周馬という、ふたりの剣士にもすくなからぬ助力を得ている旨が追記してあり、関屋孫兵衛は、もと、御当家の原士の者ゆえ、弦之丞刺殺の目的が果たされたのちは、何分、原士の旧籍に復格のことを許していただきたい――などという私事のほうは多分にしたためてある。

「駄目だ! これは」

有村は見切りをつけたように、文殻を啓之助へつきやって、

「所詮、天堂などの敵でないとみえる。頼み甲斐のない一角の報らせがまいるたびに、阿波殿の御気分がいらいらとしよう。よし、ひとつこの有村から、わざと罵詈を加えた返書をやって、かれを鞭撻してくれねばならぬ」

「や、三位卿」

「なんじゃ」

「およしなされ、また要らざる僭上沙汰と、後になって殿のお叱りをうけまするぞ」

「よいわ、よいわ。どうせ天下に、主人の気にいる居候はない。叱られついでに、一角が腹を立てて、弦之丞を討つか、舌を噛んで自殺いたすかという気になる程な、手紙を叩きつけてやる」