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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

に法月弦之丞が、阿波へ潜入することでもあっては大変と、実は心配のあまり、殿にも無断で、啓之助をつれ、ここへ様子を見にまいった次第――」

と、恐縮している一角を見すえた。

「時刻もそろそろ遅くなりますから、なるべく、御簡単に、ここを切りあげて」

と啓之助が注意をした。

「うむ」と、三位卿はうなずいたが、

「とにかく、まことにいい潮時に出向いてきたというもの、明日の夜、四国屋の商船へその弦之丞めが何も知らずに乗りこむとあれば、魚みずから網へ入ってくるようなものじゃ」

「討つ機会はたびたびであったが、必殺のところを狙って、こんどこそは遁すまいと、わざと鳴りをしずめていた吾々の苦心は、それこそ、門外漢にはうかがい知れぬものでござった」

一角は、三位卿の加勢に対して不快はないが、決してきょうまで無為にいたわけではないという意味をチラと、ここで釈明しておいた。

「大きにその必要もある」と、有村はうけいれて、

「せっかく、魚みずから網に入ってくるものを、騒ぎ立っては沖へ逸してしまうだろう。この上とも、せいぜい明日の船出までは、鳴りをひそめていることじゃ。ところで――手分けの部署は今いったとおり、一角は孫兵衛と周馬をつれて、お船蔵の川番所に、きょうから出てゆく船を油断なく見張っているように」