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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

と、その口止めを破っている自身に気がついて源次は、ちょっと、うなだれた。

「それから?」

と眼八は、相手に顧慮のいとまを与えないで、問いつめた。

「じゃあ船図面を取りに来たわけじゃないンですか、ときくと、棟梁は、ウム、と少し怖い顔をして、小松島の磯をブラブラあるいていましたが、そのうちに、どこからか、船頭三人、ギーと棟梁の前へ漕いできて、どっちも黙ンまりで乗りました」

「それが、十九日の夕方だな」

「そうです。宵はよかったが夜半です、イヤな雲になってきました」

と源次は、その晩のことを思い浮かべるらしく、海の方へ眼をやった。

宵に飲んだ酒の気もどこへやら、更けるほど冴えてきた月明りに病人のような顔色だ。

「――船が島の蔭へよったので、ここは? と訊いてみると淡路のそばの沼島だっていうンで、わっしもあっけにとられました。――とそのうちに風がだんだん強くなる、浪は荒れる、大雨はやってくる。で、みんなヘトヘトに疲れた頃、真っ黒な沖合に、ポチと、赤い灯が一ツ、浪にもまれて見えました」

「……オオ、……ウム……」

「あれだ! というと棟梁が、三人の船頭に、十両ずつの酒代を投げだして、腕ッ限り漕がせました。