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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

源次もうなだれて棟梁の影を眺めた。だが、無論、一言声をかけることもできない。

と――真っ暗な、女坂の降り口にかかろうとした時、すぐそのあたりの物蔭から、鈴を振り鳴らして、一同の前へ歩みだしてきた者があった。

白衣をまとった遍路である。

紺べりの道者笠をかぶり、白木の杖と一個の鈴を手にしていた。そして、黙然と、そこに突っ立った白い姿に、絣のような木の影が落ちている。

「退けっ」

と、ひとりの捕手がどなった。

うつむき加減に、杖をついた道者笠は、月に咲いた毒茸のごとく、ジイと根を生やしたまま、退こうともせず、驚いた様子も見せない。

道者笠の遍路、いやに、おっとりとした物構えで、意気揚々と引き揚げてきた捕手の前に、鷺とも見える白木綿の姿を立たせ、肩杖をついて、黙然と、いつまでも狭い山笹の小道をふさいだまま、どなられても、動く様子がないので、先に立ってきた捕手の四、五人、少し、小気味がわるくなってきた顔色。

「オイ、同役」

と、後からボツボツ歩いてくる仲間を待ちあわして、

「変なやつがいる」

と、肩だけは突ッ張ったが、やや息を殺したかたちである。

「なんだ、遍路人ではないか」