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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「これよ、若いの、剣山は渭城のお庭より少し広いぜ」

と笑った。

山狩評議を諷したのである。

「どれ、おっくうだが行ってみてやろうか」

深夜にかけて押し出した。

といったところで、人数は六人、それも途中で返す約束の案内に過ぎない。ただし、三位卿は賢く同行をはずした。おそらく老人の前ではわがままがふるまえぬからであろう。

「だいぶ来たな、ウム」

「倶利伽羅坂でございます」

「ちょっとくたびれたよ。やはり、年は年だな」

「吾々でさえ、この通りな汗ですから」

「おいよ」

「はい」

「ご苦労だが後ろへ廻ってくれ」

「はっ」

「松明はわしが持ってやる。腰を押せ、腰を」

供の原士がうしろへ廻って老人の腰へ手を当てがう。高野の尻押しの故智に習って、老人は楽そうに押されてゆく。

そうして、山牢もだいぶ近づいてきた。ふと仰ぐと、削り立ったような絶壁が前にあった。

「おう、この上だな、間者牢は」

「さようで」

と、孫兵衛が応じて――

「ここはちょうど、あの山の背にあたっています」

「どこかで水音が高くするな」

「しばらくゆくと流れがあり、それに沿って十町あまり登りつめます。するとやがて間者牢の柵が見えるはずで」