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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「また見えすいた嘘をいうぜ」と、周馬は冗談のようにいって、

「そんなにじらさずに、拙者に見せてくれてもいいじゃあないか」

「いや、めったにお前には見せられない。なぜといえば、周馬! おめえはまだ江戸と気脈を通じている! ……」

青白く酔った唇から、匕首のような語句が吹かれて出る。

周馬は黙然と、鯛の眼肉をセセっていた。

孫兵衛は酔ってきた。

「……てめえは口先じゃ、御当家へ推挙してくれの、俺を兄と思っているのと、うめえことをいっているが、ど、どうして! まだなかなか毛色の分らねえ獣だ」

「……それで?」

「と――おれは睨んでいるのさ!」

「ふウン……」

「この間から、俺が黙って様子を見ていれば、京都の山科在へ、二、三度、妙な手紙を出したらしい」

「出している」

「内通していやがるんだろう! 所司代へ出した密書だろうッ」

周馬は対手の酒癖を知っているように、好きに猛らしておいて、冷然と――

「そんなものか、あれあ、色女の用向きだ」

と澄ましていた。

「し、白をきるなッ……周馬」

「酌ごうか、もうひとつ」

「くッ、く……」

「どうしたえ? おい、お十夜孫兵衛殿」

「ううウ……」

「しっかりしたまえ」