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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

そしてその無謀と時機でないことを痛烈に直諫し、あえて、阿波守の意にさからったので、興たけなわであった鳴門舞の夜宴は、殿の激怒と、老人の抗争の声とでめちゃめちゃになってしまったのである。

――で、それからのこの騒動。

何よりも、阿波守や三位卿が驚いたのは、法月弦之丞を逃がしていると老人のいった一言である。

「わたくし一存の信念をもって、御当家後事のおんためと、かれの一命助けました」と、老人は平然と御前で言ってのけた。

乱心者ッ!

阿波守が気色をかえて奥へ立つと、三位卿も鼓をほうりだして、太守の後を追った。

狼狽と困惑は、徳島城を暗澹にした。

奉行所へ、船手組へ、各郡代官所へ、急に手配りを命ずべく、若侍の早馬が次々に大手の橋から城下へわかれる。

その中にまじって、ひとり、有村も阿波守の旨をうけて、別な方角へムチを打った。

撫養街道を真一文字に岡崎の船関へ。

淡路街道と丁字形になる追分から北へ走って、林崎のひろい塩田の闇に、潮焼小屋の竈のけむりが並木越しに白く眺められた頃である。

「あ、あぶないッ」

と有村、突然に手綱をしぼったので、馬は棒立ちになって横へ狂った。