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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

と、まッしぐら。

窪地の茂みへ一散に駈け下りて、逃げゆく影をのがさじと追いまくる。

周馬は時々、狐のような目をしてふりかえりながら、

「弦之丞? 弦之丞? 弦之丞?」

と、口の裡で叫びつづけた。どうして彼が生きているのだろう※(感嘆符疑問符、1-8-78)

逃げても逃げても天蓋の影、屈せずに後を慕ってくるので、周馬の元結なしの総髪はベットリと汗にぬれ、頬、耳、手の甲、茨に掻かれた血のすじで赤くなった。

雑木帯の丘の窪を出ると、裸石の層が崖をなしてつづいている。周馬は必死でその石山の背を這って行った。

時々ふところへ手をやった。そして、あることを確かめた。秘帖はいつかしら生命以上の値うちになって、かれに抱きしめられている。

ドドドドブン……ザアーッ……と珠を洗うような波の音。

闇に白くうねうねと鳴門へつづく千鳥ヶ浜。

――二丈あまりの石山の上から、旅川周馬、目をねむって飛びおりた。ザクッと、足が埋まりこんだが、案の定そこは砂地――しめたッ――と躍る姿は海風にばたばた鳴って、つづく限りの波明りに添い、時々、どぶりッと飛沫に足をすくわれながら、無二無三、逃げていった。