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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

胸にかけていた人形箱、頭巾、袖無、脱いでひとつにクルクルとまとい、自分の乗るべき空駕の中へ突っ込んだ。

下には周馬、いつもの黒紬の袷を着ていた。膝行袴はそのままで見苦しくない。道中差は野刀一本、身軽のせいか、なんだかサバサバとした気持になった。

ついでに、もうひとつの駕をのぞいて、

「お千絵殿、少し駕の外でも眺めてはどうだな」と、垂れを解いた。

霜除けをかぶった牡丹花のように、お千絵様は中にかがまっていた。

手には縄、ほつれ髪、青い顔には猿ぐつわ。

「お千絵殿、江戸にいたころから見ると、だいぶ頬がやつれましたなあ」

周馬は、駕の棒にもたれて、白い襟もとへ賤しげな目を落した。

「……だが、美女のやつれというやつは、美しさに研がかかって、いっそう凄艶という趣が深い。おう、泣いていらっしゃるか、あまり久しぶりでうれし涙が出るのでしょうな……周馬もお懐かしく思いますよ、いろいろあれ以来のお話もあるがまあ、それは宿へでも着いて」

覗きおろしていた体をだんだん駕の前へかがみこませた。そして、わざとらしく、

「可哀そうに」

と、お千絵の猿ぐつわだけはずしてやる。

「――むごいようだが、手のほうは道中だけ辛抱して貰おうか。