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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「おい堀田、出かけようぜ」

と、見ぬふりをして休んでいる駕屋へも声をかける。伊太夫は冷かすように、

「旅川、お前は案外、女には手荒だな」

「そうでもないが、つけあがるからよ。それにお千絵の姿を見ると、なんだかおれは昔から撲りたくなる癖がある」と、駕のタレに隠れた。

「旦那!」

駕屋はそろって肩を入れた。

「やりますぜ――峠の上りへ」

「オオ、やってくれ」

ギシッ。三つの駕尻が上がる。

「陽のあるうちに越えきれるかな」

「まだまだ」と、駕かきはいさぎよく杖をふり初めて、

「こんなくらいじゃゆっくりでさ」

タッタッタッと加速度に足がそろってくる――禅定寺の大屋根から吹きおろす秋らしい力のある風に、満地の銀杏落葉が旋風を描いて舞いめぐったかと思うと――その黄風の渦を衝いて突然!

「待て待てッ、その駕に用がある」

否やをいわせず、棒鼻を突き返して大手をひろげた虚無僧と虚無僧。

ひょいと、まン中の駕の内から、顔を出した周馬が、あっ弦之丞! とおどろいて向うへ抜けだそうとすると、お綱がすばやく駈け寄って、

「おのれ」

と、駕の簀とともに、周馬の横鬢を切ってかすめる。

「わっ……」