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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁
しかし、複雑な神経が、さびしい笑みに隠されていることは、もとより三位卿の感じるところでない。
「鳴門舞――しばらく殿の朗々たる謡声も聞きませぬ。詩吟、舞踊なども、たまには浩濶な気を養ってよろしいものと存じます」
「さよう」
「願わくば、わが盟主、もっと元気にみちていて下さい。大事をあぐる秋は、刻々と迫ってきております」
「うム……」
「御当家の城普請や造船や、また火薬兵器の御用意などが、着々とすすむにつれて、筑後柳川の諸藩をはじめ、京都の中心はもとよりのこと、江戸表の大弐などもしきりに、ひそかな兵備をいたしておるとか」
「うむ」
「――無論、そうなる場合、御当家の一陣は、この有村が承るものと心得ておりますが……」と三位卿は躬みずから、二十五万石の城地を賭けて、乾坤一擲天下をとるか否かのやまを張っているような気概でいる。
「何より、士気に関するのは、阿波殿のお体で――よかれ悪しかれ味方の旗色にすぐ響いてまいりますからな」
「う……む」
「海のごとく寛く、空のごとく明るく」
「心を持てとか?」
「その通りです」
「分っている。しかし有村殿、家中の者一統の生殺をあずかる阿波守じゃ。