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おうごんをあびるおんな

黄金を浴びる女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《黄金を浴びる女(おうごんをあびるおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,350 字 · 22 頁

青空文庫

不義の富を探る役目

「えッ」

「お駒さん、俺は駿河守様に代って、お前を口説きに来たんだ、聴いてくれ」

権次の声もすっかりうるんで、お駒は引据えられたようにその前にうな垂れて居りました。

不義の富を探る役目

天保四年、七年再度の大飢饉の恐ろしさは、書いたものにも故老の話にも語り伝えましたが、特に八年は窮乏の絶頂で日本全土の人間が菜色になったと言っても宜い有様、江戸から東北へかけて、文字通り餓野に横わるという悲惨な日が続きました。

大阪では大塩平八郎の乱が二月に起り、江戸でも春から人気が沈み切って、毎日何百という飢死がある有様です。

幕府の倉を開いて、窮民を賑わすとか、悪貨を鋳て逼迫した金融を緩和しようと言う議はありましたが、もう少し根本的に考えて、米価を引下ようとか、差し当り何十万の窮民を救おうとか言う議は無かったのです。

勘定奉行矢部駿河守は、後に鳥居甲斐守に陥れられて、水野越前守の末路も見ずに憤死して了いましたが、天保年間ばかりでなく、徳川三百年の治世中にも、幾人と数える位の良吏でした。

この時は若くもあり、元気でもあり、その代り新米の勘定奉行で、睨のきかなかった惧はありましたが、随分辛辣と思われるほどの仕事もやって退けました。