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くろいはたものがたり

黒い旗物語

小川 未明

線上閱讀小川 未明《黒い旗物語(くろいはたものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,583 字 · 10 頁

青空文庫

一

一

どこからともなく、爺と子供の二人の乞食が、ある北の方の港の町に入ってきました。

もう、ころは秋の末で、日にまし気候が寒くなって、太陽は南へと遠ざかって、照らす光が弱くなった時分であります。毎日のように渡り鳥は、ほばしらの林のように立った港の空をかすめて、暖かな国のある方へ慕ってゆきました。

爺は破れた帽子をかぶっていました。そして西洋の絵にある年とった牧羊者のように、白いあごひげがのびていました。子供は、やっと十か十一になったくらいの年ごろで、寒そうなふうをして爺の手を引いて町の中を歩きました。爺は胡弓を持って、とぼとぼと子供の後から従いました。

その町の人々は、この見慣れない乞食の後ろ姿を見送りながら、どこからあんなものがやってきたのだろう。これから風の吹くときには気をつけねばならぬ。火でもつけられたりしてはたいへんだ。早くどこかへ追いやってしまわなければならぬ、といったものもありました。子供は毎日爺の手を引いて町へ入ってきました。そして戸ごとの軒下にたたずんで、哀れな声で情けを乞いました。けれど、この二人のものをあわれんで、ものを与えるものもなければ、また優しい言葉をかけてくれるものもありませんでした。