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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
いやなやつだと思いはしても、死ねばよいとは考えられもしない。まして歴史は白骨のるい積である。白骨どもがやった権力の争奪、名誉欲、恋愛かっとう、父子母子の悲涙の行、友情、離反、あらゆる愛憎や謀略の陥れ合い、そして一ときの栄花というシーンに上ったり蹴落されたりの宿業流転をかえりみるとき、その中のどの白骨が「悪人である」と極印が打たれようか。ぼくには、それが見出せないのである。いや、才無く力弱く、書けないのかもしれないが。
けれど、さいごのさいごには、たった一つの「悪」はとらえてみせる。それは書かねばならない。しかし、何のなにがしと名のる人間と思われては困る。そんな小さい人間の敵ではない。
東洋の四大奇書といわれる大著作などからくらべれば、この一作などは、まだスケールの小さなものである。燈下ようやく書に親しむの秋は、作家にとっても、一年じゅうで、いちばんいい季節である。読者にも、多幸なる読む夜が、訪れていると思う。(二七・九・七)
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旅先の仮の机では、不便なことも多い。こんどの回では、後白河法皇の肖像画を見たかったが、肖像画全集も、所載誌の美術研究も手もとにないので、古い記憶の映像に、史料解釈を重ねて、その風貌や性格の片鱗を書いて行った。