Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Read アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) by 渡辺 温 (わたなべおん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,168 characters · 267 screens
あたし、海の風に吹かれ度いの。』
『誰がダンスホールの話をしたい? 江の島へ行き度ければ一人で行っておいで!』
『よくってよ。行かないわ。』『怒ったのかい?』
『エンミイ、いい子よ。そんなことで、怒ったりなんぞしないわ。その代り今度もっと暖かになったら、本当に遠くへ連れてって下さらなけりゃ厭あよ。』そんなわけで、エミ子は折角の春日楽しい日曜を、家にいて『収入一割貯金法』を読んだり、近所の子供に表情遊戯を教えたりして温順しく過ごしたのです。そして、文太郎君の調べ物と云うのは、例によって、南京鼠の運動神経組織改良と云うようなものでした。
それだのに、その言下に軽蔑し去った江の島へ、密女と共に遊びに出かけると云うのなら、いくら春のバンジョーのように朗らかな気立てのエンミイ夫人でも、腹に据えかねるのが当然です。
わが唇は生まれのままに朱し
人妻なりきとて何の咎めそ
…………
巴里の時花歌を、泪の塩の辛い口笛で吹きながら、エミ子は姿見に向って、お化粧をはじめました。シュタイン会社製舞台化粧用の三番ピンク色のパフを、はたいてもはたいても、細い泪が溝をつけてしまいます。