Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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どようふじん

土曜夫人

織田 作之助

Read 土曜夫人 (どようふじん) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 106,903 characters · 213 screens

Aozora Bunko

そう思えば、やはり自分が手をつけた女だけにふびんだったが、これからの芳子の身の振り方、おなかの子の始末、女の愚痴、涙、すすり泣き……、泣くなと引き寄せて一応可愛がってやれば、女というものはからだにごまかされてしまう……とはいうものの、芳子のからだは香水でも消せぬいやな臭いがそんな時漂って……。

「かわいそうだが、あれを思うとたまらねえや」

それにげんに一緒に飲み歩いている亭主の坂野に別れた足で、芳子のいるアパートへ帰れるものか。おめえの女房貰ったぜともいえず、といって、おめえの女房とこんなことになったんだと白状も出来ず、しかし、知らぬ顔も出来ず、何かしら言いそびれたままに、ずるずる坂野をひきとめていたのだ。

「あたしアもう帰るよ。眠くてたまらんです」

「阿呆ぬかせ、女房の逃げたアパートへ帰っても仕様があるまい」

銀ちゃんは自虐的な口を利いて、

「――眠けりゃ、ヒロポン打つさ」

「それもそうでやしたね。――じゃ、早速一発!」

坂野は軒下に身を寄せると、注射のケースをポケットから取り出して、立ったまま器用にヒロポンを注射した。そして、腕を揉みながら、さア行こう、しかし、アルプはごめん謝りの介だよと、銀ちゃんの背中を抱いた。