Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Read 土曜夫人 (どようふじん) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 106,903 characters · 213 screens
五
「おい!」
五
「何……?」
と、振り向いたが、木崎はとっさに言葉が出なかった。
何のために声をかけたのか、まるで自分にも判らず、やっと、
「君は何という名だ……?」
と、きいた木崎の声はなぜか乾いていた。
「うち、チマ子や。うふふ……。けったいな名やろ……?」
クスクスと無邪気に笑っていたが、ふと敷かれた夜具を見ると、
「――お蒲団一つしかないの……?」
「枕も一つだ。大阪で罹災したから、これだけだ」
「うち、眠とうなった。ここへ横になったかテかめへん……?」
兵児帯のまま腹ばいになって、夜具の裾の方に投げ出してあったハンドバッグを、素足の先につまんで、ひょいと肩越しに枕元へほうり上げ、その中から煙草を取り出すと、
「火貸してちょう……。あ、これで点けるわ」
蚊やり線香の火で、はすっぱに吸いはじめたが、いきなり仰のけになると、じっと天井を見つめていた。
眼がピカピカ光っていた。そして、暫く化石したように動かなかった。が、全身で木崎を意識しているようだった。眼かくしをされ、麻酔薬をかがされても、メス皿にカチリと触れる音はかすかに聴いている患者のように。
「何を考えてるんだ。