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じしんなまず
地震なまず
武者 金吉
Read 地震なまず (じしんなまず) by 武者 金吉 (むしゃきんきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 98,954 characters · 195 screens
「越後糸魚川と直江津との間に、名立といふ駅あり。上名立下名立と二つに分かれ、家数も多く、家建も大にして、此辺にては繁昌の所なり、上下ともに南に山を負いて、北海に臨みたる地なり。然るに今年より三十七年以前に、上名立のうしろの山二つに分かれて海中に崩れ入り、一駅の人馬鶏犬ことごとく海底に没入す。そのわれたる山の跡、今にも草木無く、真白にして壁のごとく立てり。余もこの度下名立に一宿して、所の人にその有りし事ども尋ぬるに皆々舌をふるわしていえるは、名立の駅は海辺のことなれば、総じて漁猟を家業とするに、その夜は風静かにして天気殊によろしくありしかば、一駅の者ども、夕暮れより船を催して鱈、鰈の類を釣りに出たり。鰈の類は沖遠くにて釣ることなれば、名立を離るること八里も十里も出で、皆々釣り居たるに、ふと地方の空を顧みれば、名立の方角と見えて、一面に赤くなり、夥しき火事と見ゆ。皆々大いに驚き、すわや我家の焼け失せぬらん、一刻も早く帰るべしと言うより、各我一と船を早めて家に帰りたるに、陸には何のかわりたることもなし。この近きあたりに火事ありしやと問えど、さらにその事なしというに、みなみな怪しみながら、まずまず目出度しなど言いつつ、囲炉裏の側に茶など飲みて居たりしに、時刻はようよう夜半過ぐるころなりしが、いずくともなく唯一つ