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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Read 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 349,705 characters · 678 screens
五十五
「お爺さん」
と肩を叩いたら、直ぐにへたへたとひっくり返ってしまい、もう腰が抜けてしまって動けないらしいから、がんりきは苦笑いをしながら、屑屋の耳に口を当て、
「お爺さん、驚いちゃいけねえよ、わしは怖いもんじゃねえ、道中筋をちっとばかり寄り道があって、たった今、この飛騨の高山というところへたずねて来て見るてえと、高山は一昨日こんな大火事で、たずねて来た人の立退先がわからねえんだ、それで途方に暮れているところへ、お前の姿を見たもんだから、呼びかけてみただけのものなんだ、そんなに怖がるがものはねえよ」
「はい」
「さあ、立ちな、立ちな。立てねえかい」
「大丈夫でございまっしゃろ」
「いいよ、いいよ、立てなけりゃ、立てるまで、そうしていなさるがいいや、わしゃ爺さんに心当りを教えてもらいさえすりゃいいんだ」
「はい」
「わしゃあね、下原宿の嘉助という者の実は……甥なんだがね」
「はい」
「餓鬼の時分から手癖が悪くって、諸所方々をほうつき廻り、めったに叔父さんといってたずねたことはねえんだが、ちっと旅先で聞き込んだことがあるから、急にかけつけて見ると、飛騨の高山がこの始末なんだ」