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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

Read 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 349,705 characters · 678 screens

Aozora Bunko

こんど高山へ出て、別にまた悪い虫が一つお雪ちゃんに取っついたのか、取っつきかけたのかしているから危ないものだと、それを言ったのさ」

「へえ、高山に、お雪ちゃんを食おうなんていう悪い虫がいたかえ」

「そりゃ、高山の土地っ子じゃありませんがね、よそからの風来者なんですがね」

「若い人かい、年寄かい」

「そうですね、まあ、若いといった分でしょうよ」

「それじゃ、あの宇津木兵馬という前髪だろう」

「違いますよ」

「仏頂寺弥助かい」

「違いますよ」

「じゃ、このごろ来た新お代官の胡見沢とかいうのが悪性で、女と見たら手を出さずには置かないという話だから、そんなのに見込まれでもしたのかい」

「それも違います」

「高山に、あの子を口説いてみようなんて気の利いたのは、いないはずだがねえ」

「がんりきの百ですよ」

「がんりきの百?」

「そうですよ、あのやくざ野郎ですよ」

「そんな人をわたしは知らないが、なにかい、この夏、白骨にいたのかい」

「いや、そいつはまだ、白骨なんぞへ来たことはございませんが、何かの拍子で、名古屋方面から高山へ舞い込んだんですね」

「いい男かい」

「イヤに粋がった、やくざ野郎の小悪党ですがね、どうした拍子か、焼け出されて隠れていたお雪ちゃんを見つけちゃったんだね、そうして、やつ、一生懸命でお雪ちゃんを物にしようとして覘っているんです」