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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Read 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 349,705 characters · 678 screens
「さあ召上れ、このまま口づけに召上れ――杯も、柄杓もござりませぬ」
「では、遠慮なく……」
竜之助は、その銀壺を取って飲みはじめました。
「あ、腸にしみる、いい心持だ――何といういい心持だろう、この味は……」
「あの山の頂に、金剛水がございましたから、それを汲んで参りましたのです」
「みんな飲んでしまってもいいかね」
「よろしうございますとも、いくらお飲みになっても飲み尽すという心配はございませぬ」
「でも、みんな飲んでしまっては、お前さんがまた困るだろう」
「いいえ……」
と言いながらも、弁信は、漫々たる血の池の面ばかりを見つめています。
竜之助は、諒解を得た意味にとって、その銀壺の水を傾け尽そうとして、早くも満腹になりました。
「まだ、ある」
さしも貪り飲んだ銀壺の水が、まだ若干を余している。
弁信は、せっかくの金剛水を、みんな飲まれてしまうことには頓着なしに、漫々たる緋縮緬の池の面ばかりを見つめている。
「でんぶ」
「でんぶ」
「でんぶ」
「でんぶ」
そうら、また白い搗きたての、べっとりしたお供餅のような一対ずつが、無数に現われ出して来たぞ。
「いったい、君は、血の池を見るために、わざわざあの雪峯を越えて来たのかね」