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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
Read 孤島の鬼 (ことうのおに) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 181,795 characters · 359 screens
七宝の花瓶
ハハハハハ僕の考えている事柄は、実に滑稽なんだよ。馬鹿馬鹿しい事だよ。だが、案外当っていないとは極まらない。手品の種はいつも馬鹿馬鹿しいものだからね」
探偵家というものが、何故そんな風に思わせぶりなものであるか、幼稚なお芝居気に富んでいるものであるかということを、今に至っても、私は時々考える。そして、腹立たしくなるのだ。若し、深山木幸吉が、彼の変死に先だって、彼の知っていたことを、凡て私に打開けてくれたならば、あんなにも事を面倒にしないで済んだのである。だが、それは、シャーロックホームズがそうであった様に、又はデューパンがそうであった様に、優れた探偵家の免れ難い衒気であったのか、彼も亦、一度首を突込んだ事件は、それが全く解決してしまうまで、気まぐれな思わせぶりの外には、彼の推理の片影さえも、傍人に示さぬのを常としたのである。
私はそれを聞くと、彼が已に何事か、事件の秘密を掴んでいる様に思ったので、もっと明瞭に打開けてくれる様に頼んだけれど、かたくなな探偵家の虚栄心から、彼はそれ切り口をつぐんでしまって、何事をも云わなかった。
七宝の花瓶
木崎の家は、もう忌中の貼紙も取れ、立番の巡査もいなくなって、何事もなかった様にひっそりと静まり返っていた。