Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

Read 孤島の鬼 (ことうのおに) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 181,795 characters · 359 screens

Aozora Bunko

屋上の怪老人

さて読者諸君、私は斯様にして、無謀にも世に類なき殺人魔を向うに廻して、戦の第一歩を踏み出したのである。私の行手にどの様な生き地獄が存在したか。どの様な人外境が待ち構えていたか。この記録の冒頭に述べた、一夜にして私の頭髪を雪の様にした、あの大恐怖について書き記すのも、左程遠いことではないのである。

屋上の怪老人

私は影武者のお蔭で危く難を逃れたが、少しも助ったという気持はしなかった。徳さんの息子に化けている私は、うっかり小屋の外へ姿を現わすことも出来ず、まして舟を漕いで島を抜け出すなんて思いも寄らぬことであった。私はまるで、私の方が犯罪人ででもある様に、昼間はじっと徳さんの小屋の中に隠れて、夜になるとコソコソと外気を呼吸したり、縮んでいた手足を伸ばす為に小屋を這い出すのであった。

食物は、まずいのさえ我慢すれば、当分しのぐ丈けのものはあった。不便な島のことだから、徳さんの小屋には、米も麦も味噌も薪も、たっぷり買い溜めてあったのだ。私はそれから数日の間、えたいの知れぬ干魚を噛り、味噌を嘗めて暮した。

私は当時の経験から、どんな冒険でも苦難でも、実際ぶっつかって見ると、そんなでもない、想像している方がずっと恐ろしいのだ、ということを悟った。