Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

Read 孤島の鬼 (ことうのおに) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 181,795 characters · 359 screens

Aozora Bunko

よく晴れた、非常に暑い日であった。朝九時頃、私が鎌倉へ行こうと着換えをしている所へ、深山木から電報が来た。逢い度いというのだ。

汽車は、その夏最初の避暑客で可成混雑していた。海水浴には少し早かったけれど、暑いのと、第一日曜というので、気の早い連中が、続々湘南の海岸へ押かけるのだ。

深山木の家の前の往来は、海岸への人通りが途絶えぬ程であった。空地にはアイスクリームの露店などが、新しい旗を立てて商売を始めていた。

だが、これらの華やかな、輝かしい光景に引換えて、深山木は例の書物の山の中でひどく陰気な顔をして、考え込んでいた。

「どこへ行っていたのです。僕は一度お訪ねしたんだけど」

私が這入って行くと、彼は立上りもしないで、側の汚いテーブルの上を指しながら、

「これを見給え」

と云うのだ。そこには、一枚の手紙様のものと、破った封筒とが放り出してあったが、手紙の文句は、鉛筆書きのひどく拙い字で、次の様に記されてあった。

貴様はもう生かして置けぬ。明正午限り貴様の命はないものと思え。併し、貴様の持っている例の品物を元の持主に返し(送り先は知っている筈だ)今日以後かたく秘密を守ると誓うなら、命は助けてやる。