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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens

Aozora Bunko

雁峠から右に引き上げた緩い草原の斜線が、一頓して二つ三つ波を打った者が笠取山で、『甲斐国志』に所謂袴腰山に当り、其東は栂の大木が黒く茂った枝沢山である。秩父では特別の名を持った山の外は、総て沢の名を其上の山に冠らせて、何沢のウラと呼んでいる。ウラとは梢の意味である。而し地図や地誌には、古くから山又は峰の字が使ってあるから、自分も山の字を用いることにした。枝沢山は即ち枝沢のウラを謂うのである。連脈の殆んど中央に臼の如き頭を擡げているのが、最高点二千百九米一の唐松尾で、西は枝沢に臨んだ急な斜面が、細い尾根を枝沢山に結び付けている。東に延びた尾根は四つ許の小峰を駢べて、最後に尖った岩峰が目に入る。それが牛王院山(御殿岩)である。其処から南に四、五尺もある篶竹の中を掻き分けて下ると、三十分で将監峠の頂上へ出られる。其間に三つ許り小さい峰があると思った。

元来此附近の山は、二、三年前迄吾々には少しも知られていなかった。雁坂峠以東では大洞山が一番高い位に思っていたものである。曾て十文字峠の途上から此連脈を遠望した時にも、それは大洞山が西の方から眺めるので多少形を変えて見えるのであろうと信じていた。