Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens

Aozora Bunko

右から石のごろごろした空沢が合してからは、花崗岩の大塊が次第に多く見られるようになる。間もなく河床が薬研を立てたように傾くと、前方の空が急に低く垂れて、脚の下まで押寄せて来た。しかし日は既にとっぷりと暮れて、闇は濃くなる一方だ。其上谷は刻々に険悪の度を増して行くので、不安の念に襲われて稍躊躇していると、先に立った大金が、旦那もう駄目だ、先へは行けないと下から声をかける。松本君と其処まで辿り着いて、大岩に凭れさま下を覗き込んだ。暗いので底までは眼が届かない、何という高い絶壁だろう。もうここで一夜を明すことにきめてしまった。

生木の焚火が燃え上って、寒さに硬ばった手足を暖める頃から、雨が強く降り出して来た。岩から岩へ大油紙を張り渡し、其下へ潜り込んで邪魔な石を掘り起したり取捨てたり、やっと腰をおろせるだけにはなったが、鰕のように身を屈めても、寝ることなどは思いも寄らない。唯岩蔭である為に風が当らないのは幸であった。体が少し落付くと腹の空いていることに気が付く。大岩から流れ落ちる雨水を飯盒に受けて湯を沸かし、焼いた塩鮭の切身にかけて、銘々に夫を啜った。