Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
起きて焚火をする音に南日君も目を覚して、二言、三言話したかと思うと又ごろり横になって、大袈裟にいえば鼾声小屋を揺がさんばかりであった。
二十四日。四時頃から仕度にかかって六時に朝飯がすんだ。西から南の方の雲が切れて、国師岳や富士山の頂上などが碧空に現われる。此時一人の行者が下って来た。峠の向う側で蕎麦粉を舐めて一夜を明かしたのだという。水を飲んで人家までの里数を聞いた後、復よたよた下りて行った。昼飯の分も炊いて飯盒に入れたまま背嚢に押し込もうとしたが、到底余地がないので南日君が腰の周りに縛り付ける。私は水を入れた石油缶をぶら下げて、七時二十分に峠に向って草原を右に左に登り始めた。直径にすれば二町位なものであるが、斜面が急である為に五、六町は登らなければならない。峠の上で道が二に分れる。右すれば新道の方へ、左して少し上った後に右に山腹を搦めば旧道の方へ行かれる。私達は左に山稜を辿って、雁坂山の頂上を指して急いだ。雲が又湧いて眺望は皆無である。昼も暗い針葉樹の林に這入ると、木の間に霧が鼠色の網を張って犇々と捲き寄せて来る。此儘何処かの谷底へでもさらわれて、体が溶けて水になるのではないかというような気がする。