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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
岩が赭い色をしている本流へ、白い花崗岩から成る河床を水が滑かにすべり落ちて来る光景は、まざまざと目に浮んで来るが、如何も此辺の全体の記憶は曖昧で、真すぐに進んで瀑の左側を登った様に信じていたのが、この古い記行を読むと先ず右の谷へ入っているのである。此谷をつめれば俗称六方石のあたりへ登り着くわけである。けれども半ばより上の岩のへつりが手に負えなかったか、引返してまた左の谷に入り、瀑に逢って進退谷まってしまった。但し上の瀑は或は本流のものではなく、前日の雨で平素涸沢であるものが瀑をかけたのだったかも知れない。松は恐らく落葉松か姫子松であったろう。姫子松なら五葉であるから松釵はちと不適当だ、これもその二字を棄てかねた執着の致す所である。
岩頭に踞してしばし疲れたる足を休む。空いつしか曇り来りて、今にも降り出でむさまなりしが、南の方前岳の頂を超えて、徐々と湧き出でたる一団の叢雲は、見る/\左右に広まりて一層は一層よりも黒み渡り、いとおもしろく其形を変へつゝ、やがて大空の半にもや達しけむ頃、吹き下す天風に逆らひたるにや、雲行忽ち乱れて驀然として北の方にたなびき、始はたゆたふが如くなりしも、後には秋洪の千里を浸すが如く、浩滔として進み来り、しかも其中に嵐を孕み霹靂を載せて、※(「さんずい+鶲のへん」