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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
此間は動くと危険であるから、両手に岩を抱いて俯伏しているより外に途はなかった。それよりも恐ろしかったのは、濃霧が一度さっと開けた次の瞬間に、また忽ち雷雲の密聚部隊のような黒雲に襲われた時で、冷く鋭い風に吹き捲くられ、氷のような雨に叩きすくめられて、手はかじかみ耳の附根は痛くなり、地面にしがみついたまま、如何なる事かと心は不安に駆られていた。恐らくこれは早手ともいう可きもので、長いように思ったが、時間は三、四十分に過ぎなかったであろう。雨燕も真物であったか否か不明である、唯雨中に出現したのでそう書いたものに過ぎない。
卯の花の散りこぼれたるにや似たらむ白砂を蹈みつゝ勾配の急なる山脊に沿うて攀ぢ登ること二十余町、屡々巨巌の面を衝いて起るに遇ひ、手捫し足板して、風化せる花崗岩の上を躋り行くに、岩角忽ち崩れて跨躡するもの数次、漸くにして之を踰ゆれば、途一頓して稍平かに、偃松生ひ続きて、其間時に異草奇委卉の風雨に委して狼藉たるものあるを認む。なほ進むこと二町許にして急坂を登れば、終に三角測量櫓の下に達す、傍に円錐形をなせる一大花崗岩の屹立せるあり、即ち駒ヶ岳の絶巓にして、海抜殆ど一万尺、白峰山脈の一万余尺なるものを外にしては、全峡中また之と比肩す可き高峰あるなし、況んや吾震電雷動の日烈風暴雨を衝いて其巓を極め、幸