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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
青紫蘇の繁った庭の隅に、ポンポンダリヤの赤い花が、一きわ珍らしく目に映った。日は容赦なくどんどん落ちて行く。河狩りの人達が長い柄の付いた銛や網などを担いで向うからやって来た。鱒が獲れるのだそうだ。今日汽車で渡った片貝川の本流は、白い石の河原のみで一滴の水も無かったのに、不思議なことだと聞いて見れば、五月雪しろ水の出た時に海から上り込むのだという。鋭いの鳴声が晴れた空に快く響く。
南日君まで出懸けて行って相談に加わった。長いこと橋向うで立話しをして、四人一緒に帰って来た。私達の手許には幸に実君が持って来た五升の米がある、今夜の野宿に差支はない、それで今から一斗五升の米を舂かして、明日早朝に源次郎が夫を背負って追い付く手筈に事は決ったのだ。二時間余りを費した大詰の幕としては、余り見栄えもしないが、これまでに漕ぎ付けた役者の骨折は、傍で見ている程暢気なものでは無かったに相違ない。
五、六戸の家が淋しげにかたまっている奥平沢の村を通り抜けて、十町足らず行くと、田が尽きて畑ともつかない砂地の所どころに、小豆や粟などが蒔き散してある草原に出た。元は河原であったものが、河が東に移った為に島のような形になって、島尻に十坪程細かい砂を平に敷き均した所がある、其処に天幕を張って泊ることにした。