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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
尾根は雑木が茂っているので、雪の多い東側を搦みながら行くことにした。雪田が尽きると槭や岳樺の薄暗い木立が待ち構えていたように私達を抱き込む。反り返った太い枝が足場のよくない山の斜面に沿うて、意地悪くのり出している。動ともすると、口惜紛れに蹈みにじった枝が跳ね反える拍子に旨く足を浚われて、かすみに懸った小鳥のように宙に釣られたまま、※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)けば※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)く程手足が利かなくなって、果ては遊び飽きた子供の玩具のようにむざと放り出される。「オイ、如何した」、こんな言葉が聞き飽きる程繰り返された。
不意に頭の上が明るくなって、行手に白いものがチラチラ見え出したと思ったら、小黒部の椈倉谷に落ち込む雪渓の一つに突き当った。其縁に沿うて二、三十間登ってから、幅の狭そうな所を足掛りを刻んで一歩一歩に辿っていると、一行は長次郎を先に稍や下の方に姿を顕して、苦もなく渡って了った。南日君が下から見上げて「オイ、大丈夫かい」と案じ顔の捨台詞を残して行く。趾の先が痛くなったのを我慢して、漸く向う側に着くと急いで跡を追駆ける。