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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
小窓の方面で二度爆声が聞えた。
雪田を横切って南に行くと、五、六の巨岩が重り合って水の落ち口を示している、渦を巻いて雪の下に走り入った池の水は、滾々として湧き上る噴泉の如くに一度に迸り出て、※々と其処を流れている。此渓流に沿うて下れば劒沢へは近いのであるが、渓は頗る峻しい、殊に水量の多い時は困難で危険である。右に廻って一段高い稍や平な窪地に登った、道がある、枝の裂けた岳樺や膚のすりむけた深山榛の叢立ちは、残雪に押し窘められてまだ生命の閃きを見せない、八、九人の鉱夫が小窓の方からぞろぞろ下りて来た。此附近に野営して小窓から劒へ登ることを強く主張した南日君も、見るから寒そうなこの野天に天幕を張って一夜を過すことだけは、余り気乗りもしていなかったらしい、小窓を登ることは私も熱望していたが、この冷い物の怪に充ちた原中に野営することは思いも寄らぬ、明日三窓を登って時間に余裕があったら小窓へ廻ることに決めて、輝水鉛の露出した岩径を伝いながら小窓の雪渓に下り立った。
雪渓は幅の広い堤防状の段を斜に幾つか形作って、右から左へ左から右へと入れ違いに緩やかな勾配で丿※と続いている、表面をすべるふくよかな線のうねりが如何にも美しい。