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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
其中の一は奥木挽谷の先で、一丈許りの岩壁の下を川が深潭をなして流れ、水とすれすれの所に辛うじて足の指先が掛るか掛らない位の岩の襞がついている場所であった。距離は二間足らずであるから、どうにか通れそうに想える。それで交る交る其処まで行って足を掛けて見るが、荷が無ければ兎に角、荷があっては素早く行動しないと落ちそうなので、長次郎さえも行きかけて止めてしまう。所が源次郎一人は更に躊躇の色もなく、ツツウと越えてしまった、誠に無造作なものだ、これには皆呆れてしまった。こんな男をよく指導してみっちり仕込んだなら、さぞ役に立つようになることであろうと思った。
対岸に赤沢が合流する上手で右岸に徒渉した。この徒渉は深さ腰に達し、且水勢が強いので、長次郎の助を借りても尚お困難を感じた。元来徒渉す可き場所ではないのであるが止むを得なかったのである。間もなく再び左岸に徒渉したが、これは前よりも楽であった。岸辺には大水の際に置き残された沙が二尺近くも積っていた。其中から根曲り竹の筍や行者ニンニクなどが新らしく生えている。晩の汁の実に採集した。東沢の合流点の上で三度徒渉して右岸に移った、ここは膝までしかないので少しの困難もない。