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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
附近に駒草が咲いていたのは珍らしかった。
烏帽子の野陣場へ着いたのは四時である。如何に野陣場でもこれはまた余りに穢いので驚いた。ここで高瀬への下り路を見出すのにまた一時間余りを費した。其路は二十米許り上ってから下りになるのである、それを鞍部ばかり探していたので、見附からぬのは当然であった。この下りは相当に急な黒土道で、木の根が蟠っている、私達は五時十分に下り始め、六時二十分に濁沢に下り着いて、大虎杖の中を流に沿いて下り、濁ノ小屋の前に出た。この小屋に泊る積りであったが、四、五人の岩茸採りが小屋を占領していたので、不動沢まで歩いて、その右岸の河原に天幕を張った。
八月四日。朝は晴れていた。起きると直ぐ瀑を見に行く、高さ七、八丈許り、幅は広くはないが水量多く、立派な瀑である。出懸けに何気なく振り返って見ると、河原に一もとの車百合が咲いていた、昨夜どうして気が付かなかったろうと不審に思っていると、これは長次郎が植えたのだと聞かされて、その優しさに心をうたれた。午前七時十五分出発。間もなく橋を渡って、高瀬川の右岸に沿い、一里許りで再び橋を渡り、どこまでも左岸を下って行く。