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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
折尾谷の出合
思い切って一気に滑り落ちれば造作なく片はつく、が、それっ切りだ。
また綱が下げられた。十丈余りの長さはあるが、底までは届かない。中途の右側の段を成している所で、立木に攫りながら皆の下り終るのを待って、再び綱を下げる。今度は木があるので、身軽な中村君や私には楽であった。小さい沢を渡り、両面羊歯の繁りに茂った薄暗い森林の中を横さまに通り抜けて、沢伝いに下り着いた所は、仕合谷の落口より少し下流の河原であった。五時五十分。
河原は水が退けてまだ間もないのか、蹈むとじめじめして心地が悪い。仕合谷の方にも好い野営地がないので、今下りた沢の突き当りの大岩が堰き止めた乱石の上を平にして泊り場所とした。蓬や茅を大分刈り取って下敷にしたが、体が痛んで、それに黒部に入って初めての野営であるから、目も冴えて、此夜はとうとう安眠されなかった。河床に乱れ伏す大岩を躍り越え跳ね返りながらたぎり落ちて来る黒部川の水声は、地響を打って、終夜私達の仮寝の床を震蕩していた。
折尾谷の出合
三十一日。依然として天気模様は好くない。風の方向も不定である。唯割合に雲が高いので稍心強い。気はせいても支度に手間が取れて出発したのは午前八時半であった。