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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
荷を卸して暫く形勢を察していた長次郎は、忽ち東側の急壁をサラサラと無造作に下りて底に立った儘、両側を見上げて「えらい窓だ」と笑っている。どうだいと聞くと行ける行けると答える。其処から二、三間下の横の襞を伝って南側に登り、一町ばかり先の尾根の一角に立ってあたりを見廻している。もう一人の山田という人夫は岩壁に沿うて下りて行ったが、何処からか向う側に移って、やがて長次郎と長い間話し合った末、二人一緒に長次郎の下りた岩壁を登って帰って来た。長次郎は始は無論其処を通る積りであったらしいが、二人で談合の結果下を廻ることに極めたのであろう。私等が上を通るのかと聞いたら、彼処は辷ると止まらないから下を廻る方が安心だというた。これは荷が重い為に厄介であると山田に説得されて考え直したに相違ない(長次郎の外は二人とも山には初めての人夫であった)。けれども私等は強いて通して呉れとは言い切れなかった。それで山田の通った所を廻ることにして、百米も下ったろう。すると好い工合に岩壁が崩れて其内側に樺の立木が生え続いている所に来た。それを伝って下ると谷底に向って傾いた一枚岩の上に出る。