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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Read 平の将門 (たいらのまさかど) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 232,193 characters · 463 screens
刈入れして来い」
いいつけて、ここ、四、五日にわたり、刈るそばから、麦束の山を、豊田の館へ、運ばせていた。
その日、将門は、奴僕と一しょに、足場の上で、土倉の上塗りをやっていた。
夏ちかい薄日照りが、この地方特有な土の香を蒸している午ごろだった。物々しい人声に、将門が、ふと、足場の上から、柵門の外をのぞくと、毛野川へ刈込みにやった郎党や奴僕たちが、怪我人をかついで、後から後から入って来る。
「どうしたっ?」
将門の声を仰いで、郎党の一人が、
「やられました。――やられました」と、子が親へ、訴えるような、声を投げた。
「喧嘩か。あいては、どこの、たれだ」
「喧嘩はしません。いきなり、向うから、大勢して、討ってかかって来たのです。――麦は、たれに断わって刈入れるぞ。ここの河原畑は、どこの所領か、知っているかと」
「相手を訊いているのだ。相手を」
「筑波の郎党たちです」
「なに。良正の家来だと」
将門は、足場を降りて、
「どの辺だ。たれか、案内しろ」
と、血相をかえて走りかけた。
「兄上。およしなさいっ……」
三郎将頼や、ほかの小さい弟たちは、抱きついて、ひき止めた。
「毛野川の河原畑は、去年の暮、叔父御の召使が、胚子付けしたのですから――もともとそれを刈入れるのは、こっちが、悪いのです。