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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

Read 平の将門 (たいらのまさかど) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 232,193 characters · 463 screens

Aozora Bunko

おかしいような、おかしくもないような声が、くつくつ流れる。

颯っ、颯っ、颯っ、――と、榊が、風を鳴らした。彼の祝詞が、一だんと、声を高める。

すると、物々しい雅楽が、一せいに吹奏され出した。笙だの、ひちりきだの、笛だの、胡弓だの、竪琴だの、竪笛だの、大鼓だのあらゆる高級な楽器が、田舎伶人のあやしげな感覚によって、交響楽を奏で出したものである。本来は、粛然たる趣のある雅楽のはずだが、酒興の乱痴気を沸かせるだけの目的であるから、呂も律も譜もあったものではない。宛として、神楽調である。

ところへ、また、どたどたと、橋廊下を走り渡って来た役者がある。一方は、背に箙を負い、弓をもち、左大臣の扮装をした興世王である。もう一人は、不死人で、これも、を付けた冠に、右大臣の装束をつけ、太刀を佩いて、裳を長く曳いていた。

そして、二人は、裳と裳を、曳き合って、

「……ああら、ああら、ふしぎや、奇瑞やな」

と、唱歌しながら、

「ひんがしの、空の曠野を、ながむれば――むらさきの、雲はたなびき――春野の駒か、霞むは旗か、つわものばらの、盈ち満つところ……」

と、眼の眩るほど、舞い連れ、舞いつづけ、