Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

Read 平の将門 (たいらのまさかど) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 232,193 characters · 463 screens

Aozora Bunko

人の盛んなるときはこうしたものかと世間でもいっていた。

しかし、いま、小次郎が眼に見たのは、たしかに、ふつうの人間の群ではない。折ふし、時刻も丑満をすぎて、五更にちかく、しかも見張らしい影は、対岸の川原にも、一かたまり残っているし、築土の下にも立っている。三段がまえの忍びこみである。盗賊にしても、鼠賊ではない。左大臣忠平の紫陽花の壺を目ざして、組織的に、もくろみを果たしにかかった群盗にまちがいない。

「たいへんだっ……。ただ事ではない」小次郎は、水から飛び出しかけた。

だが、両岸に、見張がいる。うかつに、立ったら一矢であろう。彼は、着物をおいた所まで、細心に、這って行った。肌も拭わず、身にまといかけた。一瞬のまに思われたが、その間に、群盗たちは、すでに、ぞんぶんな行動を仕遂げたものとみえる。内から一つの門をあけ放つと、なだれを作して、川原の土手を馳け降りて来た。

小次郎が、すぐ眼のまえに、紫陽花の君を見たのは、このせつなである。

思うに、悲鳴を聞かなかったので、紫陽花の君は、気を失っていたものにちがいない。ひとりの男の小脇に抱えられた彼女の顔は、黛をふさぎ、眼をとじて、何の苦悶のさまもない。