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ゆうれいとう
幽霊塔
黒岩 涙香
Read 幽霊塔 (ゆうれいとう) by 黒岩 涙香 (くろいわるいこう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 266,479 characters · 532 screens
若し此の疑いの通りとせば真に興の醒めた話で有る、成る程アノ義母殺しの輪田夏子の墓へ参詣した所を見ると或いは此の疑いが当るかも知れぬ、仲働きを勤めて居て主人の養女夏子とは懇意で有った為、昔の事を思い出して参詣したのか、斯う思えば一言も無いけれど、余は何故かアノ怪美人を仲働きなどの末とは思わぬ、何となく別人の様な気がする、全体余は至って直覚の明らかな生まれ附きで、今まで斯うだろうと感じた事は余り間違った例がない、此の松谷秀子を古山お酉とやら云う仲働きと別人だと思う感じも、決して間違う筈がない、と自分だけは斯う思う。
併し別に争い様もないから、無言の儘で、何とかお浦の疑いを挫く工夫は有るまいかと、悔しがって居ると、丁度叔父朝夫が這入って来た、叔父は甚く落胆の様子で「ア、今朝篤と松谷秀子嬢に逢い、昨夜の詫びも云い更めて時計の秘密を聞き度いと思い其の室を尋ねたら、虎井夫人と共に早朝に此の宿を立った相だ、爾して行く先も分らぬ」お浦は益々勝ち誇って「爾でしょうよ、昔の素性を知った人が多勢居る土地に、そう長居は出来ぬ筈です」と独語の様に云い、更に余に向って「道さん、夜逃げよりも朝逃げの方が、貴方のお目には貴婦人らしく見えましょう