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ゆうれいとう
幽霊塔
黒岩 涙香
Read 幽霊塔 (ゆうれいとう) by 黒岩 涙香 (くろいわるいこう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 266,479 characters · 532 screens
第二回 幽霊の正体
余が下検査の為此の土地へ着いたのは夏の末の日暮頃で有ったが、先ず塔の前へ立って見上げると如何にも化物然たる形で、扨は夜に入るとアノ時計が、目の玉の様に見えるのかと、此の様に思ううち、不思議や其の時計の長短二本の針がグルグルと自然に廻った。時計の針は廻るのが当り前とは云え、数年来住む人も無く永く留まって居る時計だのに、其の針が幾度も盤の面を廻るとは余り奇妙では無いか、元来此の時計は塔其の物と同じく秘密の仕組で、何うして捲き何うして針を動かすかは、代々此の家の主人の外に知る者無く、爾して主人は死に絶えた為に恐らくこの針を動かし得る人は此の世に無い筈だ、余の叔父さえも、数日来色々の旧記を取り調べて此の時計の捲き方を研究して居た、余は若しや川から反射する夕日の作用で余の眼が欺されて居るのかと思い猶能く見るに、全く剣が唯独りで動いて居るのだ。真逆幽霊が時計を捲く訳でも有るまい。
第二回 幽霊の正体
誰が何して戸を捲くかを知らぬ錆附いた時計の針が、塔の上で独りで動き始めるとは唯事で無い、併し余は是しきの事には恐れぬ、必ず仔細が有ろうから夫を見出して呉れようと思い、直ちに進んで塔の中へ這入った。