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ゆうれいとう

幽霊塔

黒岩 涙香

Read 幽霊塔 (ゆうれいとう) by 黒岩 涙香 (くろいわるいこう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 266,479 characters · 532 screens

Aozora Bunko

罪さえも、何だか左程咎めるに足らぬ様な気がして、腹の中で其の軽重を計って見ると、決して悪意でお紺婆を殺した訳では有るまい、善悪の区別も未だ充分には呑み込めぬ我儘盛りの年頃で、甚く心の動く事が有って我知らず殺すに至ったとすれば随分其の罪を赦しても宜い、殊に其の罪の為に死刑、終身刑の宣告まで受け、牢の中に憂月日を送ったとすれば既に罪だけを償った者では有るまいか、況してや死人と為って、生まれ変って来て見れば、全く別人の様な者で、前身の輪田夏子の罪の為に、後身の松谷秀子が生涯罪人の様に見做さるるは、視做す方が余り邪慳だ、決して慈悲ある人間の道では無いと、一方から此の様な気が込み上げて来れば又一方からは、幼い時から家庭、学庭、境遇、口碑などに仕込まれた是非善悪の本念が湧き起り、何が何でも罪人を敬愛する道はないと思い、余が心の裡は殆ど火水の戦争である。

其のうちに秀子は気が附いて、徐ろに目を開き、第一に硝燈の光を見、次に室中を見、権田時介を見、最後に余の顔を見た、幸い手の古傷は権田が既に包み直した後で有った為自ら見なんだ、見廻す中に今までの事を思い出したか、小児の様な力無げな口調で「貴方がた