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ゆうれいとう
幽霊塔
黒岩 涙香
Read 幽霊塔 (ゆうれいとう) by 黒岩 涙香 (くろいわるいこう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 266,479 characters · 532 screens
所謂時計室の広い所へ立ったが、思わずも顔と顔とを見合わした、余の己惚かは知らぬけれど秀子の眼にも寧ろ無事に出られたのを悔む色が見えて居る。
是より余の居室の外に在る縁側へ下ると、怪しや、中から此の室の戸を引っ掻く様な音が聞こえる、余は初めて此の室に寝た時、画板の間から怪しい手(後に分った虎井夫人の手)の出た事など思い出し、又近く昨夜に、確か此の室から神経を掻き紊す様な恐ろしい叫び声の聞こえた事を思い出し、何か室の中に尋常ならぬ事が有りはせぬかと気遣った、併し之は秀子に見せ可き次第でないから、後で独りで検めて見ようと思い「オオ最う大方夜が開け放れました、サア秀子さん、貴女は定めしお疲れでしょう、兎に角一休み成さらねば、エ、お居室まで私が送りましょうか」秀子は淋しげに笑み「左様です、思って見ると昨日の朝から未だ食事も致しません」全く疲れが顔の面に蒼白く現われて居る、余「サア送って上げましょう」
全くの他人同様と為って了って、余に送られるのを果たして承諾するや否やと、余は聊か気遣ったが、秀子は承知とも不承知とも言わぬ、唯余の居室の方へ耳を傾け「オヤ、此の室の中には」